【感想】先進製造業の生産マネジメント論から見た事務用情報システム開発 - 三津石智巳から参照されていたので読む。背景として、「生産プロセスとは情報システムの稼働・運用を意味する」というメタファーが有用であると考え、共通フレーム2013における
- 保守プロセス
- 運用プロセス
- サービスマネジメントプロセス
に対する製造業からの知見を得ようとするものである。
…は本書の守備範囲を超えるものである。議論を明確化するためにも、本書においては、企業パフォーマンスの1ファクターである「競争力」、すなわち、…
p. 12
いきなり本筋とはあまり関係がないのだが、風呂敷を広げすぎない、この態度が参考になる。
というか、「製品設計情報」の転写というモデルは酒井崇男氏の本で知ったが、「「タレント」の時代」の参考文献を読み返すと、本書の著者である藤本隆宏氏の著書がいくつも挙げられている。
製品開発システム
- ←労働力ほか
- →製品設計情報(開発期間・開発生産性・総合商品力)
生産システム
- ←生産資源(原材料・部品・労働力・資本設備)
- →製品(生産性・コスト・品質・納期・リードタイム・フレキシビリティ)
最終顧客
p. 13 図を文字に起こした
ここで、新規開発後の情報システムは「生産システム」に該当する。Web APIにあてはめると、「生産資源」がHTTPリクエスト、「製品」がHTTPレスポンスと考えることができる。BtoBtoCの情報システムにあてはめると、「生産資源」がBからの商品情報登録・更新で、「製品」がCによる購入と考えることができるだろうか。
インプット個数に対する良品アウトプットの比率を「歩留まり」(yield)という。
p. 21
情報システムにあてはめるとなんだろう。HTTP 200の比率かな。
レイアウトのタイプ
- 万能型
- 機能別
- 製品別(半流れ式)
- 製品別(流れ式)
p. 37 図を文字に起こした
アーキテクチャ図にそっくり。製品別がマイクロサービスアーキテクチャといったところか。半流れ式はmessage queueを使った非同期呼び出しに当てはまる。
既存の設備を使いながらでも、適切なレイアウトを選択することによって、大幅な生産性向上が可能
p. 40
アーキテクチャをリファクタリングすることで、性能を改善できるような話。
いわゆる「大量生産システム」は、前述の「専用生産設備」「部品の互換性」に加えて、「同一形状の製品・部品を大量に繰り返し生産すること」と、それによる「製造コスト・製品単価の大幅な低減」を特徴とする。したがって、「アメリカ式製造システム」の確立は、「大量生産方式」への道を開くことになる。
p. 63
ここでいう「前述」は「アメリカ式製造システム」を指す。
生産マネジメントの製造における「部品の互換性」は、ソフトウェアのproductionにおいて何を意味するだろうか。互換性があるとは、仕上げ工がいらないという意味なので、事前に計算されたインデックスのスキャンだけで検索が完了し、DB以後にアプリケーションロジックを必要としないというような意味に捉えるのはどうか。すなわち、生産マネジメントの製造における「十分な加工精度」とは、ソフトウェアにおいては書き込みパスの十分効率的な時間・空間計算量および、スケーラビリティということになる。
むしろ、「互換性部品」による銃の生産は、高コストなやり方だったのである。…銃の場合に軍が「部品交換性」にこだわったのは、おそらくは「部品が互換的ならば、戦場で壊れた銃を解体し、壊れていない部品を再組み立てすることで相当数を迅速に再生できる」という軍事上の理由からであり、コスト低減と大量生産のためではなかった。
p. 64
おもしろ。「互換性」のような「品質特性」はあればあるだけいいものではなく、要求から必要な品質特性が導出されるによるというのが改めてよくわかる。
フォードは、生産技術に関する、新しい工作機械、治具、レイアウト、マテハン(物資搬送)などの実験を累積していった。失敗した工作機械のスクラップの山ができたという。「フォード方式は一日にしてならず」である。
p. 70
まさに「アジャイル」である。ハードウェアであれ、ソフトウェアであれ、生産に先立っては仮説検証が必要である。
19世紀以来のアメリカ産業の200年の歴史は、互換部品の追求にせよ作業の標準化にせよ、要するに部品間・作業間の「すり合わせ」を減らす努力の歴史であったといえなくもない。
p. 89
なるほど。OSI参照モデルなんかもここの系譜から来ておるのだろうな。