三津石智巳

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「採用学」感想


採用を学ぶために読む。

採用の目的

  1. 企業が設定した目標と経営戦略論を実現するために、不足している(将来時点で不足すると予想される)分の人材を獲得すること
  2. 新しい人材の獲得によって、職場や組織を活性化させること

良い採用の基準

  1. ランダムに採用したときに比べて、将来の時点でより高い仕事成果を収めることができる人材を獲得できているかどうか
  2. ランダムに採用したときに比べて、人材が企業へとより強くコミットし、高い満足度を得て、中長期的に企業にとどまるかどうか
  3. 採用活動を行わなかった場合と比べて、組織を構成するメンバーに多様性が生じ、結果として組織全体が活性化しているかどうか

p. 35

ここまで深く考えれなかった。

採用とは、

  1. 企業側が出した募集情報に反応して、求職者が企業へとエントリーをするか否かの決断を行うことから始まり(募集)
  2. そうして集まった候補者の中から社員として相応しい者を企業側が選び(選抜)
  3. そこで出された内定を求職者が受け容れ、かつ組織の中で活躍する(定着)までに至る、一連の活動だといえそうだ。

p. 49

募集→選抜→定着というフレームワークは役に立つ。

募集段階で大量の候補者群を抱え込むことが、選抜のコストを押し上げてしまう

p. 91

自然な帰結。

ワナウスが提唱したのが「現実路線の採用(realistic recruitment)」だった。一言でいえば、「すべての適切な情報をゆがめることなく求職者に対して伝える」という採用のあり方だ。

p. 93

こうしたいと思う。出口治明氏も同じことを言っている。

マーケティングも役立つかもしれない。ネガティブな情報も含めてどう顧客に届けるか。

求職者の自己選抜を促す①篩い分けを目的とした情報と、彼(女)らを惹きつける②売り込みを目的とした情報を、自社のリアルな現実として、簡潔で、分かりやすいメッセージとして伝達する必要があるだろう。

p. 105

言われてしまえば当たり前なのだが、両方必要だ。

「経験ベース×求職者向け」の情報源としては、採用の説明会、面接でのやりとり、インターンシップ、リクルーターといったものが、「経験ベース×パブリック向け」としては企業の製品・サービス、キャリアセンターを含めた学校の教員・職員からの情報が、「メディアベース×求職者向け」には、採用ホームページ、就職情報サイト、採用パンフレット、その他の募集広告が、最後に「メディアベース×パブリック向け」には、企業のアニュアルレポートや(採用以外の)企業広告などが含まれる。

ケーブルとターバンによれば、このうち求職者は、メディアベースのものよりも経験ベース、求職者向けに発せられたものよりも、パブリック向けのものに、より高い信頼を置く。さらに、同じ情報が複数の情報ソースから一貫してもたらされた時には、その情報の信頼性が高く評価される。

p. 108

ここを読んで脳が活性化した。いいフレームワークの効用は脳の活性化をもたらすのだと思った。採用に関連する情報を2×2の表で表現することでもれなくダブりなく全体を把握することができる。採用というと、個人的は経験ベース×求職者向けのイメージが強かったがそれだけではない。

採用の入り口を多様化することは、それぞれに異なる特性を持った個人が集まった複数の候補者群を持つことに他ならない。

p. 116

採用チャネルを複数持つことの根拠は多様性の確保である。ただ、選抜も多様性を確保するような選抜でなければならない。ただし、結果として優秀な人材を取れるとは限らない。

結局、自社の採用基準は、自社で紡ぎだしていくしかないわけだ。

p. 128

そりゃそうだ。

このように、「変わりにくい」、あるいは「変わりやすいが自社内で育成機会のない」能力こそが、採用において企業が注目するべき能力である。

p. 134

これはいい指針。

Ryan, Ann Marie, and Nancy T. Tippins. "Attracting and selecting: What psychological research tells us." Human Resource Management: Published in Cooperation with the School of Business Administration, The University of Michigan and in alliance with the Society of Human Resources Management43.4 (2004): 305-318.

引用されているこちらの論文(無料で読める)によれば、構造化面接の方が、非構造化面接よりも妥当性係数が高い。ワークサンプルが最も高いが、構造化面接と比較して大差ない。職務に関する知識テストは構造化面接よりやや低いものの高い妥当性係数を示す。これだけ見れば、構造化面接とコーディングテストの組み合わせはなかなか良さそうだ。

こうしたバイアスを排除するためには、面接において面接官が事前に手にする情報は極力少なくすること、あるいはまた、上記のような「バイアスが存在する」という知識を事前に与えておくことで、かなりの効果を上げることができる。

p. 144

本面接の前にカジュアルな面接や採用イベントで会話を行っている場合、バイアスがかかると言えないだろうか。採用イベント参加者と面接官は分けたほうが良いのかもしれない。

あえて言い切るが、私は、もし上記のような手続きによって、採用のための能力要件が適切に定義され、それを測定するための洗練された選抜ツールが用意されているのであれば、採用担当者による総合評価は行われるべきではない、と考えている。

p. 147

バイアスの排除がどれほど追求されるべきかという話に思われる。ただ、本書は主に新卒採用向けに書いてあるが、中途採用や経営層の採用はある程度直観に頼らざるを得ないところもありそう。

面接に紛れ込むバイアス

  1. 即時的決定
  2. 確証バイアス
  3. ネガティブな情報
  4. 厳格化
  5. 日言語的行動

普段あまり聞かないバイアスも紹介されていて良い。

 

読了。採用も論語と算盤の両輪で取り組んでいきたい。